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加藤 孝司/KATO Takeshi
Design, Real Landscapes

デザイン・ジャーナリスト。東京は浅草生まれ。建築・デザインを横断的に探求、執筆。
デザイン誌や建築誌などへの寄稿をはじめ、2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、建築、デザイン、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考中。
http://form-design.jugem.jp


月別アーカイブ: 3月 2012

セルフエイドのススメ

アウトドア関連の著書のあるイラストレーターの小林泰彦氏は、かつて、服はファッションである前にギア(道具)であると言った。
先日発売になったポケットサイズの道具の本「Tools」第2弾。その発売を記念して、「暮らしの道具展 Tools 2012」のポップアップ・ショップが本日まで代官山のDAIKANYAMA T-SITE GARDEN GALLERYで開催中だ。

一昨日訪れたこのショップに並べられた、それぞれ異なる物語のある道具や物たちにふれ、’60〜’70年代当時のアメリカのカウンターカルチャーな人々の「セルフエイド」の精神を思い出したのは、単なる偶然ではないだろう。

小林泰彦氏はその著書のなかで、アメリカインディアンや欧州諸国の人々の暮らしの知恵を受け継いだ、漁師、きこり、カウボーイや鉱山師などが道具として普段使いしてきた素朴だが丈夫で、人間らしく、それゆえに自由な雑貨や服などをしてヘビーデューティーと呼んだ。そしてそれらの道具を目的にあわせて使いこなす彼らの姿勢を「セルフエイド」の精神であると指摘した。

セルフエイドとは、文字通り自分の身を自分で守る、という意味だが、きこりや漁師、カウボーイなど、彼らが日々対峙する自然のなかに潜む、日常の危機を未然に防ぐことは言うに及ばず、それはもっと広い、暮らし全体を支える知恵そのもののことでもあった。

’60年代以降、フォックスファイアーからはじまって、ホールアースカタログ、メイド・イン・USAカタログなど、セルフエイドの精神を伝えるメディアはいくつかあった。
そして、日常を豊かにし、暮らしに役立つ365の道具が掲載されたToolsカタログのいたるところにも、現代のセルフエイドの精神が息づいているように僕にはみえてくる。

その意味で、Tools2号の表紙にもなっているマンハッタンの工房で手作業で制作される斧(オノ)と、日本の農村で使われている昔ながらの鍬(くわ)が、並んで置かれているディスプレイは象徴的だ。自らのことは自らでなす、あるいは、丈夫で長持ちする道具をつくり、それを使い続けるという精神は、古今東西の区別なく近しいものだから。
かつて工業化社会の果てに、新しい価値を模索した人々がいたように、今われわれは、情報化社会の果ての別の新しい価値を、その当事者として模索している。その具体的な成果のひとつがToolsカタログなのだと思う。

「暮らしの道具展」Tools 2012
〜3月25日(日)
DAIKANYAMA T-SITE GARDEN GALLERY
http://tsite.jp/daikanyama/event/000350.htm


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